一笑歳時記

季節のうつろい 一笑の時の流れ

◆2015年9月からは、「今月の一服」でコラムを掲載しております。

2015年04月21日

清明

大地が芽吹き、生命の力がみなぎる季節。

4月。新年度を迎え、新しい環境、新しい目標に向かって気持ちをひきしめる人も多いのだろう。
季刊誌「動橋」を社員で編集することになって、準備期間をいれれば3年経つ。書くことは四苦八苦しながらも楽しくあり、以前よりずっと「お客様にお伝えしたいこと」が大きくなった。
この春で9冊になるのだけど、その中で特に76号の「大地を守る人」が好きだ。
取材したスタッフの推敲前、出来たての原稿からはまだホカホカと言葉がとび跳ねるように心に響いてきた。
30代で代々続く米作りを守り、さらに自分らしく様々な挑戦をして次の世代につなごうとしている若者、語り口調や人柄は穏やかだと文章のあちこちに感じられる。
「おかげさまで、」と何度もでてくるのが印象的だった。
米をつくり、命をつなげてくれた先人、育ててくれた大地、支えてくれる家族への感謝。
それらが、この言葉ひとつから溢れている。
「おかげさま」。なんとなくわかっているつもりだけど、意味を調べてみた。
見えないものに感謝する。ふだん当たり前にいる人、ことに感謝する。そして周りと喜びを分かち合うこと。
日本人は、豊かであり厳しい自然・季節の変化と向き合い、培われた生きる知恵で、人々が関わり合い、陰の力に感謝して命をつないできた。
「おかげさま」はそんな日本人の美しい言葉。

気ぜわしく時間に追われる毎日は、自分を守るために足元ばかり見てしまう、ひたすら進むために前ばかり見ていないだろうか?
 
まずは自分の上や下、うしろや横を見渡してみよう。今あるのはまわりがいっしょになってきてくれたから。
日本人はThankyouやILoveyouは照れくさい、でもわかっているだろう、なんてナンセンスじゃないかしら。
こんな時代だからこそ、「おかげさまで。」の一言できっと伝わる。
そうして、「清明」というこの季節はもっと輝きだす。

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